『ジェヴォーダンの獣 4Kレストア』上映トークレポート

ジェヴォーダンの獣 4Kレストア
ディレクターズ・カット
上映後トーク
新宿ピカデリー 2024.2.5

ゲスト:中沢健(作家/UMA研究家)、西川亮(DVD&動画配信でーた / PRESS HORROR編集長)




“ジェヴォーダンの獣”の正体に関する
3世紀越しの新事実が判明!?


西川亮:こんばんは、西川亮です


中沢健:こんばんは、UMA研究家の中沢健です


西川:雪の中、ありがとうございます。皆さんが映画をご覧になっている間も積りに積もってます。さて、皆様の中で本作『ジェヴォーダンの獣』を今日初めてご覧になった方は?


中沢:おお、ほとんど初見!


西川:皆様びっくりされたんじゃないでしょうか。色んなものを詰め込みすぎて、とんでもない映画です


中沢:後半のブーストが凄いことになってますよね


西川:中沢さんは本作との出会いはいつ頃でしたか?


中沢:2002年の初公開の劇場で観ました。僕はまだ大学生でしたが。それ以前から僕はUMA(ユーマ)、ネッシーとかが大好きで。その時点でジェヴォーダンの獣はフランスのUMAという認識でした。UMA本とかにも、そんなに大きなページではないけど<獣>は載っていて、それが大作扱いで映画化されるということで大興奮して観に行きました


西川:その時の感想としては、どうでしたか


中沢:映画好きからすると…ジェヴォーダンの獣って色んな仮説があるんですが、監督がそれをミックスして映画を作ってくれた。UMAファンにも気を使ってくれて色んな要素が出て、正体はこれなんだと断言せず、どの説の人も納得できる。例えばビッグフットみたいに完全新種のUMAが出るようなシンプルなものでなく、海外にある、既存の動物をそのまま使った映画でもなく。映画の中で陰謀が出てきますが、実際にジェヴォーダンの獣をめぐる陰謀説もあるので、ぜんぶつなぎ合わせてる。
で、僕が感動したのは、ジェヴォーダンの獣の諸説を調べていくと明らかに「これ本当に獣なの?」という遭遇事例があって、獣と格闘した人が獣を殴ったらボタンのようなものが外れたというのが残っているんです。着ぐるみみたいなのを使った、人為的なものじゃないか?という説ですね。ということで、いろんな説を調べ上げて作られた映画なんだなと感動しました。


西川:二足歩行していたという目撃談もあるんですよね


中沢:僕が好きなのは、<獣>を目撃した人が、人家の近くだったので「斧を取ってきてくれ」と叫んだら獣が逃げて行ったという話です(笑)


西川:人間の言葉がわかる(笑)


中沢:いろんな説があるんですが、どの説を支持している人も、当時100人以上の人が殺されてしまったという事に対して、犯人が全部同じという説は誰も支持していないんですね。怪物みたいな獣がいた説でも、人為的な何かという説も、海外の動物だったという説も、全部の事件が同じものが起こしたのではなく、当時起こったいろんな事件、単純にオオカミに襲われた事件なんかも、まとめてジェヴォーダンの獣の話にミックスされているんじゃないかと


西川:ハイエナ、オオカミ、犬説などがあるんですが、監督が採用しているのがアトラスライオン説ですね
これはパンフにも書いてあるのでご覧いただきたいんですが。当時アトラスライオンはフランスにはいなかったんですよね。当時すでにフランスによるアフリカの植民地化が進んでいたので、貴族がそこから連れ帰ったんではないかと、そういう可能性があるという説を本作では膨らませていて、なおかつその裏に秘密結社が暗躍して陰謀を巡らせ、アトラスライオンを使っていたんじゃないかと。劇中では鎧みたいなものをまとっていますが、監督による目くばせというか、ただ大きなライオンが出てきただけではがっかりしてしまうのでUMA感を出したのではないかと…


中沢:非常に好きです。いまはだいたいCGになっちゃって、昔はアメリカだとストップモーションとか着ぐるみですけど、私が好きな映画のジャンルで、滅びてしまった文化で「トカゲ特撮」というのがあるんです。若い人は、いや年配の人ももう知らないかもですが、本物トカゲとかにツノとかくっつけて、裏でスタッフが棒で突っついて暴れさせるという。ジャンルがあったんですね


西川:今だったら愛護団体などからクレームが来そうですけど


中沢:トカゲに限らず、本物の動物を使って怪物を表現するっていう技術があったんです。僕はそれを見て、ストップモーションや着ぐるみよりは生物感はあるな~と思ったんです。ワニとかにツノや背びれ付けたらUMAを作れるという夢があって、この映画を見てそれをちょっと思い出したりもしましたね


西川:映画の解釈としてはライオンですが、映画と関係なくジェヴォーダンの獣の中沢さんの解釈を教えてください


中沢:この映画、いろんな説をミックスしていますが、唯一意図的にスルーしたと思われる点があって。ジャン・シャスケルって人が<獣>らしき生物を撃って解剖されてるんですが、さすがにライオンだったら当時の学者も気づくと思うんです。でも、そうはなっていない。つまり、既存の生物でなく、当時のフランスに未確認生物がいたという可能性が排除されていないんですね。新種の。
1つ言えるのは種としての未確認生物でなく、たとえばネッシーが本当にいるとしたらネッシーという種の生物がたくさんいるという事ですけど、ジェヴォーダンの獣については多分1個体だと思うんです。狩りで仕留められてからは被害がなくなったとされています。何らかの異常個体、最近だと北海道でOSO18という熊が話題でしたが、ああいう、異常に成長してしまったオオカミとか野犬とかが正体なんじゃないかと考えたほうがいいかなと僕は思います。


西川:今回パンフに寄稿していただいたんですが、そこで衝撃の事実が判明するんですよね。「ジェヴォーダンの獣はまだ生きていた!」と


中沢:ぼくこれ本当にパンフに載せてもらえると思ってなかったんですけど、監督とか見たらびっくりすると思うんで。ジェヴォーダンの獣は250年前の話なんで、もう最新情報なんて出ないはずなんですが、丁度昨年、フランスから友人のUMA研究家のヴァジルさんという方が日本に遊びに来まして。皆さんご存じないと思うんですけど<伊香保温泉獣人>っていうのの調査を一緒にやったんです。その時、彼が飲みの席で「ナカザワ、知ってるか。ジェヴォーダンの獣の写真が去年撮られてたんだぞ」って「エェーッ!」ってなって。スマホで見せてくれて。ジェヴォーダンの獣は当時の有名なスケッチがあるんですけど本当にそれそっくりなシルエットの動物で川の中に立っていて
250年前のジェヴォーダンの獣がいま現れたという事は、考えられるのは2つ。僕が先ほど話したような異常個体だとすると250年ぶりにオオカミかヤマイヌの中からジェヴォーダンの獣のような個体が生まれてしまったのか、あるいはもう1つはオカルト寄りの話になるのですが、妖怪じゃないですがその生物が250年生き続けていたと


西川:信じられないような話ですが、その写真がなんとパンフレットに載っているので皆さま是非その目でお確かめください


中沢:なんかこの部分だけ東スポみたいな(笑)


西川:でも僕、中沢さんの原稿を受け取ったときにメールで「今回は『緊急検証!』のノリでなく真面目に書いてみました」とおっしゃっていたので、そのつもりで読んでいたらまるで映画本編のように最後の数行でブーストがかかって。


中沢:まあ、ジェヴォーダンの獣ってオカルト本によく載ってるんですよ。この映画をUMA・オカルトとして観てる人ってどのくらいいるか分からないですけど僕らにとってはお馴染みのネタで。ただ他のネタだと異次元からやってきたとか政府の陰謀が…って結構暴走した記事を書く人もいるんですけど、ジェヴォーダンの獣に関しては「ムー」とかでも真面目に書いちゃうんですよね。やっぱ本当にそういう事件はあったんだと想像しやすいので。僕も歴史を踏まえて向き合わざるをえないなと。でもどうしてもこの写真は使いたいなと(笑)


西川:(笑)ジェヴォーダンの獣の話からは逸脱しちゃうかもなんですけど、さっき打合せのときにも出た、UMAと映画の関わりの話なんですが


中沢:そうそう、UMAが出てくる映画ってたくさんあるんですけど、正直そのほとんどは僕が見ても正直辛い内容が多くて。UMAが愛があってもアレなのが多いんです。でもジェヴォーダンの獣は誰が見てもちゃんと面白い、いいUMA映画なんですけど。こういう作品とは逆に、映画の情報がUMAに影響を与えてるってケースがあるんです有名なところでいうとネス湖のネッシー、ネッシーっていうと皆さん首長竜のイメージだと思うんですが、もともとネス湖に巨大な何かがいるって話は昔からあって、そこから首の長いネッシーの目撃談が出てきたのが1933年。これって最初の映画『キングコング』が公開された年なんです。それが何の関係があるんだ、というとこの映画の中でブロントサウルスって恐竜。首長竜が沼から出てきて人を襲うシーン、まあ今の恐竜学からいうと全部間違ったことやってるんですけど、それが見せ場の1シーンになってるんです
その年に初めて首の長いネッシーの目撃談が出て来たっていうのは何か関係があるんじゃないかって指摘してる人が複数いるんです。だからネッシーは存在しないんだ、って事じゃなくて、はっきり姿が見えないけど何かがいたんだって時に『キングコング』の1シーンを思い出して言ってる可能性って高いんじゃないかって。そこからフェイク写真とかも出回って世界中でネッシー首長竜説なんかも出てきちゃったので。『キングコング』が無かったら今日のUMA事情ってのはおそらく今とは違っていたんだろうな、と
こういうケースは他にもあって、チュパカブラっていうプエルトリコで目撃されてる吸血UMA、これも、背中にトゲトゲがあるとされているんですけど、そのトゲトゲのあるタイプの最初の目撃談があったのが『スピーシーズ 種の起源』っていう映画が公開された年で…


西川:懐かしいですね


中沢:その映画が1995年公開。スピーシーズのエイリアンの背中にも、チュパカブラの目撃情報にそっくりなトゲトゲが生えてて…そういうのを熱心に調べてる人がいて、どうやらチュパカブラの目撃者は映画『スピーシーズ』を観たことがあるらしい、という事にどり着いてるんです。だからUMAについて調べるときは、その前後でどんな映画が公開されていたかと。僕は宇宙人もUMAだと思うんですけど、山梨県の甲府市で1970年代に子供が宇宙人を目撃したという、これ日本での代表的な宇宙人遭遇例の甲府事件と言われてるんです。この事件には否定派がいて、子供のでっちあげだろう、元ネタがあるはずだと調べて『ウルトラセブン』のフック星人にそっくりだから、それを基にしたデマだろう。って言うんです。でも僕からしたら、嘘つくにしてもフック星人は渋すぎだろうと(笑)まあでも、こういう元ネタがあるかないかはオカルト界では定番ですね。そういった意味で僕らも映画はチェックしないといけないな、と


西川:UMAとはちょっと違いますけど、スピルバーグの『未知との遭遇』(1977年)以降、描かれる宇宙人のひな型がああいう…


中沢:グレイ・タイプですね


西川:それです、グレイ・タイプになっていったというのもそうだと思いますし。映画って僕たちが思う以上に世の中のカルチャーとかUMA事情に影響を与えているんですね


中沢:やっぱスピルバーグって天才で、まあ今の若い人たちが昔の宇宙人事情をどこまで知っているかってのはありますが、昔の宇宙人本って宇宙人の種類や見た目はほんとバラバラ、千差万別だったのに、未知との遭遇が世に出てからは宇宙人っていえばほぼグレイになっちゃって。どんだけスピルバーグ凄いんだと
でも、こういう話になると映画の影響でUMAが「作られた」って方向になるんですが、我々UMA/オカルトの先輩方も、黙ってそれに負けるわけにいかないんで…ちょっと陰謀論になるんですけど、世界政府・世界の権力者たちは自分たちが出したい情報を小出しにして国民がどういう反応を示すか探っていて、ハリウッド映画はその1つなんだと。アメリカの影の政府はハリウッドに情報を小出しにして映画を作らせてるという説が生まれてくるんですよ。だから『未知との遭遇』も影の政府がスピルバーグに本物の宇宙人の情報を流して作らせたという…だから『E.T.』(1982年)を出したころは宇宙人とアメリカ政府は友好的だったけど『インデペンデンス・デイ』(1996年)の頃は揉めだしたと


西川:(笑)


中沢:でも本当、そういう話をしている人はいて、ぼくが何年か前にビートたけしの「超常現象Xファイル」という番組でオカルト肯定派の韮澤潤一郎さんという、たま出版編集長の。宇宙人大好きな方なんですけど。その韮澤さんから聞いたのが「中沢くん知ってる?『スター・ウォーズ』(1977年)ってジョージ・ルーカスが考えた訳じゃないんだよ。あれはね、宇宙人がルーカスの頭に<念>を送ってストーリーを作らせてるから、スター・ウォーズはほぼ実話で<フォース>も実在するんだよ!」って。「フォースあるんですか?!」


西川:ははは(笑)


中沢:まあ誰が本当のことを言ってるかわかりませんが、ほんとに韮澤さんがいうように影の政府がハリウッドに宇宙人映画を作らせてる可能性もありますし、逆に映画の影響でUMAが生まれたっていう人もいて、どちらにせよオカルトを語るうえで映画との結びつきはスルーできないものなんですよ


西川:スピルバーグの話は有名で僕も聞いたことがあって、映画ファンからしても有名な都市伝説の1つだと思うんですけど、さすがにそのスター・ウォーズの話は初耳でした


中沢:UMAだと動物学とかも調べなきゃなんですが、その前後で公開された映画はチェックしたほうがいいです。逆にUMA肯定派がUMAを証明するときに、有名なビッグフットの「パターソン・フィルム」っていうのがあるんですが、それは『猿の惑星』(1968)の公開前に撮られた映像だっていうのがあって、仮に素人のフェイクだとしたら『猿の惑星』の前にこんなクオリティは出せないはずだ、というのは反論材料として言ってるんです。いずれにしてもUMAを語るうえで映画との関係性は重要な要素なんです


西川:ちなみに先ほど言及された伊香保温泉…


中沢:伊香保温泉獣人ですね


西川:獣人!それは、ヴァジルさんとご一緒に捜索されて、何か発見はあったのでしょうか


中沢:残念ながら目撃者の方には会えなかったのですが、その方のお父さんとコンタクトをとりまして「ウチの娘は嘘をつくような人間じゃない」という言質はとりました(笑)あとは二人で伊香保温泉に入って「温泉いいですよね~♨」って。


西川:笑


中沢:伊香保温泉獣人も不思議なUMAで、足跡しかないんですよ。なのにそこからビッグフットみたいなのを想像した人がいて、それを僕らの東スポが記事にしたっていう。これはきっと映画のクリエイターと一緒で、足跡1つ、髪の毛1本から我々はものすごいビジュアルイメージを連想するんです


西川:それこそ映画『ジェヴォーダンの獣』の獣の造形、すばらしいですけど、これもそういう事ですよね。わずかな手がかりから全身をクリエイトする


中沢:僕らだけじゃなくて、例えば湖でちょっとコブっぽいものが映った写真があったら、そこから地元のおじちゃんおばちゃんがそこから恐竜の形にする。UMAってのは半分イマジナリーの世界なんで、そこが楽しみでもあると思います


西川:そろそろお時間が迫ってきたのですが、中沢さんからもし、『ジェヴォーダンの獣』を観た人にこれもおすすめだよというUMA映画があったら教えてください。


中沢:VHSしか出てない映画もたくさんあるんですが(笑)DVD出てそうなのでいうと『ウォーター・ホース』(2007年)って、ネッシーの映画がありまして。UMA映画って僕はモンスター・パニックものよりもジュブナイルもののほうが名作が多い気がしてまして。これは簡単にいうと『ドラえもん のび太の恐竜』のピースケみたいな事をネッシーでやってて非常に心温まるいいネッシー映画なのでオススメです。ほんとは『永遠の夢 ネス湖伝説』(1997年)をオススメしたいですけどVHSしか出てないので(笑)


西川:ははは。でもここで言っておけばいつかリバイバルされるかも


中沢:そうなんですよ!言っておけば『永遠の夢 ネス湖伝説』が4Kで新宿ピカデリーにかかるのも夢じゃないかも(笑)いや本当にいい映画なんです。ネッシー映画って大概つまんないんですけどダントツで面白いのがこれなんです。ぜひ劇場で
そういえば『ドラえもん のび太の恐竜』は恐竜映画ですが、『竜の騎士』はUMA映画なので、この2本を観るとUMAと恐竜の違いが、きっとわかってもらえると思います(笑)


西川:そうですよね。地下世界に言ったら恐竜の子孫が生きていたっていう


中沢:あれはいいUMA映画です


西川:というところでお時間です。中沢さん、何かお知らせはありますか?


中沢:はい、今度2月にホビージャパンから、ホビージャパンといえばガンダムとかの印象だと思うんですが、なんとUMAを特集した本が出るんです。普段ガンダムとかゴジラを造形している方々がUMAを個性的に作って、それに僕が解説を加えるという夢のような本が出るので、よかったらチェックしてください。


注:「H.M.S. 幻想模型世界 UMA -未確認生物-」(現在発売中)


西川:と、いうことで、観客のみなさん、中沢健さん、今日はありがとうございました!


中沢:ありがとうございました!
(終)


『ジェヴォーダンの獣 4Kレストア』

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